催眠療法    
 











「OUTDOOR FIELD」第3号掲載「癒しワールドをゆく」
株式会社アスキー


「OUTDOOR FIELD」第3号掲載「癒しワールドをゆく」

原稿 文責・益田

『癒し』ワールドをゆく

第3回

過去の記憶とご対面!? 催眠療法(ヒプノセラピー)体験記

やすらぎを求めて幾年月、春風恋しい街角で、癒してあげたいあなたのココロ……というわけで、OUTDOORFIELDが贈る、「癒し」スポット体験報告第3弾。今回は、人の無意識への問いかけ「催眠療法」にトライ&リポート。記憶の糸を辿る旅のなか、彼が見たものは……?  
(取材・文 増田シロー)

「ト、トラウマですか?」

「シローくんってさ、なんかトラウマって、ない?」。

打ち合わせが始まって間もなく、編集者F嬢がたずねてきた。

「ト、トラウマですか?」。

トラウマとは、その人にとって心理的影響を与え、なおかつ、あとあとその影響が残ってしまう体験のことである。例えば、幼い頃に犬に噛まれたため、大人になっても犬が苦手のまま、という具合だ。といってもこれはあまりにも単純な例で、どんなトラウマのために今の自分があるのか、それがはっきりしないことの方が多いという。

「うーん、ピンときませんねぇ」。

「じゃあさ、今度の『癒し』、これでいこうよ!」。

取り出したるは一枚の企画書。

「さ、催眠療法?」。

「そ。「退行催眠療法」て言ってね、子供の頃の自分や、自分の前世を再体験することで、今の自分 を変えてゆくんだって」。

「は、はぁ……」。

「じゃ、決まりね」。

わずか1分で打ち合わせは終了。数日後、僕は東京・池袋の催眠館ラディアンスを訪ねた……。

(清楚な部屋に、リクライニングチェア。ここで、催眠療法(ヒプノセラピー)が行われる)

「静かに目を閉じて……手から、足から、頭から……どんどん力が抜けてゆく……」

  「催眠と聞くと、みなさんテレビでやっているような催眠術ショーを思い浮かべられるようですが、ショーと催眠療法(ヒプノセラピー)はまったくの別物。催眠療法は、あくまでも療法なんです」
最初にそう説明してくれたのは、今回、僕の担当をしてくださるセラピスト・山崎氏。催眠療法に入る前には、山崎氏から催眠の基礎について分かりやすいレクチャーを受けることになる。その中でも重要なのが、「催眠状態中でも、自分の意識はある」ということ。つまりこれは、催眠下だからといって自分の知らない間に変な言動を取らされていたりすることはないということだ。それを聞いて安心したら、早速「年齢退行療法」がスタート!

  この「年齢退行療法」を簡単に説明すると、催眠により子供の頃の記憶を蘇らせ、それを今の(大人の)自分で再解釈することにより、凝り固まったマイナスイメージを取り払う……という事になる。    
「人間の癖や性格、行動パターンは、0〜13歳ごろまでに確立してしまい、それ以後になると本人が努力をしてもなかなか変えることはできません。ですから、もし今の自分になにか問題があると考えるのなら、子供の頃の自分にその原因を聞くのが一番、というわけなんですよ」
そう説明を加えつつ、リクライニングチェアに横になった僕を、山崎氏が催眠状態へと導いてゆく。
「静かに目を閉じて……手から、足から、頭から……どんどん力が抜けてゆく……」
その言葉通り、全身のあちこちから力が抜けていく。……気持ちいい。ちょうどいい室温と微かに流れる美しい音楽があいまって、とても体が楽になってゆく。ただし、眠くなってくる、というわけではない。睡眠と催眠は違う。眠ってしまっては、自分の無意識下への問いかけができなくなってしまうのである。

(セラピーに入る前に、山崎氏から催眠療法の詳しい説明を聞く。効果的な治療のために理解しておこう。)


「う〜む、これが催眠効果か……」

  眠りの一歩手前でなんとか引き返したのを確かめ、山崎氏は僕の意識を自身の子供時代へと誘導する。
「長い階段を一段降りるごとに、催眠が深くなってゆきます……どんどん降りてゆきます……どんどん……どんどん……気がつくとあなたは、5歳の頃のあなたに戻っています……」。
  5歳の頃の自分。次第にその存在が、ぼんやりとだか頭の中に浮かぶ。そこで、山崎氏の質問が始まる。5歳の自分の周りには、今何が見えているのか? どこにいるのか? 何をしているのか? 

そういった質問に答えていくにつれ、不思議なことに、自分の5歳の頃の映像が、段々と鮮明になっていく。この時、僕の頭に浮かんだのが、明りひとつない暗闇、山の中の道、父親の運転するバイクに乗っている、というものだった。そう、確かに5歳の頃、こんなシチェーションがあった。僕の父が、母が反対するのも構わず、真冬の日曜に、僕を日帰りツーリングに連れていったのだ。おぼろげならば記憶があるのだが、この年齢退行療法の最中には、それらをこと細やかに思い出すことができたのである。

  さらに、別の場面への誘導が始まる。先ほどと同様、周囲の状況や、近くにいる人、どんなことをしているのかといった、山崎氏の質問に答えてゆく。2回目だからだろうか、比較的より鮮明な映像が頭に浮かんだような気がするのだが、今回浮かんだのは、ドライブインで、父親に、ミニカーを買ってもらったという場面。これもやはり、遠い遠い幼児期の記憶であったのが、より明確に、より細部まで思い出せる。父親の顔も、ちゃんと若い。やはり、催眠状態にいることが、記憶の糸をたどりやすくしているのだろうか。
「う〜む、これが催眠効果か……」。

  ……というところで催眠状態が解かれることに。導入とは逆に、体の各部に除々に力を入れてゆく。
「……ゆっくり……目を開けて下い……」

言葉にならい、目を開ける。まるで寝起きのような、それでいてすっきりしたような感覚の中、ふと時計を見た時、「あっ」と僕は声に出して驚いた。なぜなら、開始から20〜30分くらい経っただろうかと思っていたのが、実際には90分もの時間が経過していたのだ。

  今回の取材は、本当の意味で自分を見つめ直すことができる、非常に貴重な体験だった。正直いってセラピーを受ける前は、催眠状態に入ってしまったらマインドコントロールされてしまうんじゃないか、なにか後遺症があるんじゃないだろうか、などといった不安があった。しかしながら、そういった心配はまったく無用。心身を楽にした状態で、あくまでも素直にセラピストの質問に答える(もちろん、個人のプライベートは厳守)……それだけで、幼児期の記憶を再体験できるのだ。ちなみに「患者さんは、どの世代が一番多いですか?」との質問には、「中学生からお年寄りまで、非常に幅広い層の患者さんたちがいらっしゃいます」(山崎氏)とのこと。
  ココロに悩みをお持ちの方もそうでない方も、自分自身に向き合う意味で、一度この「年齢退行療法」
を体験してみてはいかがでしょ?

(リクライニングチェアを倒してそこに横になり、いよいよ催眠療法の開始。体中の力を抜き、幾度かの深呼吸を終えると、記憶をたどる旅が始まる……。)

(セラピー中の患者の反応は、すべてパソコンに入力される。患者の年齢退行を促進するための貴重なデータだ。)


総評

日程の都合上、全8回のセラピーのうち一回分しか体験できなかったためか「心の傷が刻まれたのはこの時!」といったシーンには出会わなかった。ただ、セラピー中に浮かんだふたつのシーンのどちらにも「頼れる父親像」が出てきたのが、自分のことながら興味深い。
「父親をとても偉大なものとして幼児期に理解してしまったため、強い大人になりきれない自分へのいらだちが今の性格を作っているのでは?」

山崎氏のアドバイスを聞きながら、「そうかも……なぁ」と納得してしまう僕だった。

最後に、山崎氏はこう語った。
「私の目標は地球の総人口64億を癒すことです。優秀なセラピストを少しずつ増やしてゆき、いつかは……と考えています」。

荒んだ社会を、世界を、催眠療法が変えてゆく……。そう遠い未来の話ではない。

催眠館ラディアンス 
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